04.07

近美で開催中の『生誕100年 靉光』展へ。高校の時に画集では見たことがあったけど、本物を見るのは今回が初めて。全体的に戦時中の雰囲気が色濃く反映された、暗く濁った色使いの作品が多いが、気になる作品も数点。まず、代表作「眼のある風景」と同年に描かれた「肖像(貴婦人)」という小作品。30cm×20くらいの小さな作品だけど「見えないものが見えてしまっている」ようなオーラ漂う、ちょっと神懸かり的な作品。それから面相筆で割とグラフィカルに描かれた墨絵の作品群は、お洒落でモダンで超越的に美しく、靉光の類い稀なるデッサン力の「力」の部分を純粋に「美」の部分に向けて制作したような印象。そして亡くなる間際に描いた油画「白衣の自画像」。厚く塗り重ねられた絵の具の向こうに画家の生き様が浮かび上がってくるようで、ほとんど痛々しいが、観る者の心を静かに揺さぶる傑作。
その後、同館で開催中の『リアルのためのフィクション』展へ。好きな作家ばかりだったけど彼女たちを「女性」という枠で括ってしまうことに多少の違和感。あと、展示に関する情報量が少なすぎる気がした。特にソフィ・カルの作品は、もっと作品への入り口を増やすようなやり方で展示して欲しかった。塩田千春「Bathroom」は初めて動画で見た。作家の内面に渦巻く静かな激情に巻き込まれるような作品だった。全体として、作品の一点一点は素晴らしいんだけど、企画がイマイチ。BTで展開される「なんとか特集」のような印象で、新規性に乏しかった。展示を見た後、皇居周辺を散歩。


AI-MITSU
Fiction for the Real